Interview


nicora ray ark 1st インタビュー

chiyono(icon)
ami(Animals)
齊藤 州一(プロデューサー)

齊藤:ちぃちゃん(chiyono)が上京することになって「東京で何かできそうだね」という話をどこかの楽屋で話をしたような記憶があって。

chiyono:そうですね、最初は軽い感じでしたよね。

齊藤:じゃあどういうことをやりたいかみたいな話になって、そのときに「ギリギリを攻めるようなものがいい」って言ってなかった?

chiyono:そんなこと言いましたか? 全然覚えていないです。当時はもうちょっと体育会系のノリでやってもいいのかなと思っていたんですけど、今は思っていない。優しい世界でやっていきたい(笑)。

齊藤:(笑)それで、じゃあどういうのが合うのかと想像していたときに、BOHちゃんとかと連絡を取る機会があって、「こういう音楽やりたいんだよね」みたいな話をしたんですよ。そうしたらゆよゆっぺくんやISAOさんを紹介してくださって。じゃあデモを作ってみようか、という感じでスタートしました。amiにはいつ声を掛けたか覚えていない……。

ami:月見ル(ライブハウス「月見ル君想フ」)でやったトークショー(2020年12月に開催したイベント「Talk from Unico」)のときには「ダンサーとして参加します」と言っていたので、その前には聞いていたはずですよ。

齊藤:たしかにそうだ。

齊藤:ありました。ちぃちゃんの存在がアイコンとしてあって、それと一緒に戦ったり守ったりする式神みたいな動物たちが何人もいたら面白いな、みたいな発想ですね。そもそもちぃちゃんが普段表でやっている光っぽいところとは「逆の希望」みたいな感じのイメージをしていたので、そこで守り神みたいな動物たちが欲しかったんです。

齊藤:いろんなことがありすぎて(苦笑)。僕自身が4回ぐらい入院して、鬱病にもなっちゃって。週末のLeo-Wonderのライブはなんとか行けていましたけど、それ以外はほとんど家にいて、外に出られない感じだったんです。その期間でも、ちぃちゃんとamiとかは月に1回LINEをくれていたんですけど、全部既読スルーして……マジで申し訳ない(笑)。唯一コンスタントに連絡が取れたのは岡田典之くん(ex-空想委員会)ぐらいかな。あとは家族ぐらい。それぐらい追い込まれていたんです。なので、そもそもライブとかのシーンにもう戻れないんじゃないかなぐらいの感覚だったけど、岡田くんとか周りの関わっている人が勇気をくれるし、ちぃちゃんたちはLINEをくれるし、それで元気になってきた感じですね。

ami:ときどき話していたよね。「大丈夫かな? これは進むのか?」みたいな。

chiyono:「もしかしたらなくなるかもしれないね」と「もしかしたらいけるかもしれないね」がどっちも存在していたので、曖昧な話だけをして「じゃあ、おやすみ」みたいな。

齊藤:そうですね。やる気満々です! 戦っていきます!

chiyono:元気になってからは早かったですよね。

ami:本当に早かった。ビックリしたもん、もうレッスンしている! みたいな。

齊藤:(鬱病のときは)考えられる状態ではなかったんですけど、やっぱりアイデアは貯まっていたんでしょうね。自分の中でのnicoraのイメージは蓄積していたので、早く形にしたかったんです。

ami:amiinAが終わったあとの数ヶ月は普通の生活をしていたんですけど、その期間にやっぱり自分は表舞台に立ってパフォーマンスしたい人なんだと実感したんです。なので、nicoraの話を聞いたときには「これがラストチャンスだ、これに賭けるしかない」と思いました。

ami:働いていました。事務作業には向いていないと思うので接客業で。社会人として生きるのも勉強にはなりましたね。

齊藤:大人になったよね。頭脳は全く変わっていないけど(笑)。

chiyono:久しぶりに会っても全然変わっていなくて安心した(笑)

ami:お客さんですね。お客さんに届けたい。やっぱり私はライブが一番好きなんです。コロナの時期とかは本当に悲しかったんですよ。私の知っているライブじゃないと思って。今はもうコロナがだいぶ収まってきてちゃんとライブができる環境になったので、お客さんに向けてライブがしたい気持ちです。

chiyono:富士山ご当地アイドル、王道アイドルの3776と、うさぎのみみっく!!という「THEかわいい」みたいなグループをやっているんですけど、nicoraは全然違うテイストになりそうで面白そうだなと思いましたね。それに、だいぶ前の話になるんですけど、小中高ぐらいのときに空想のアイドルを描くのが好きだったんです。それで、ひとりの子が「かわいい」も「王道」も「カッコいい」も全部できたら、全部のところからお客さんが来そうだから、そういう構想でやりたいな、自分がプロデュースしたいなと思っていたんですよ。nicoraをやることで、自分がそれをやれるじゃん、やりたいことを自分でできるなという気持ちから始まりました。3776のプロデューサーの石田さんも「いろんなことをやりなよ」みたいな感じで、背中を押してくれたのもあります。

齊藤:nicoraは天才科学者のニコラ・テスラから来ているんです。「Unico Tesla」(プロジェクトチーム)と相まみえるのが「nicora」で、「ray」は「光」、「ark」は「発掘」みたいな感じの意味ですね。でも深い意味は全然なくて、響きが超いいなと。「nicora」って言いたい(笑)。

ami:実は歌う曲も今後あるんですよ。なので、そこは楽しみにしていただければ!

齊藤:ダンスで相当持っていかれているので、「歌うよ」って言ったら苦笑いされました。

ami:そうなんですよ(笑)。「この振付の量で私は歌うんですか?」とか言って。活動が終わってからの空白の時期があるので、そこでのブランクもあると思うんですけど、やっぱりnicoraのダンスは大変です。

齊藤:amiinAの振付の2倍くらいあるよね。

chiyono:やる気があって、ちゃんと指示に従える方(笑)。作りたい物に沿って協力してくれる、我々の活動に寄り添って、きちんと遂行できる。

一同:(笑)

chiyono:いや! だって、普通にどんな仕事でもそういう人が欲しいじゃないですか!

齊藤:最初の発想としてamiには固定でいてほしかったんですけど、Animalsがシャッフルされて「この日のライブはこの動物たちで行きます」みたいにしたら面白いだろうなと思っていたんですよ。挙手制で「いついつにライブあるけど出られる人?」って聞いて、「じゃあこのメンツで出ようか~」みたいな。それぐらい自由度があっても面白いんじゃないかなって。シャッフルしてやっていけばいろんな化学反応が起こるんじゃないかなと思います。

齊藤:iconのchiyonoとAnimalsが4人で、合計5人のフォーメーションを基本的な最終形にしたいです。でも正式メンバーも、もっといていい、シャッフルしてもいいかなと思っています。野球のスタメンみたいなイメージですね。そのうち永久欠番の58番とか出てきたら面白い(笑)。

齊藤:そうですね。それをそのまんまやっています。わかりやすくいうと「内側に向かう曲」と「外側に向かう曲」みたいな感じなんですよ。「Rise」は外に向けて出していて、「mement」は内側に向かっているんです。

ami:そうなんだ、学びました(笑)。

齊藤:amiinAのときからそういうのが好きなんですよね。amiが狼をそのままamiinAから引き継ぐように、流れとかそういうイメージはあるので、歌詞の中にもそういう要素が出てくるんです。テクノロジーに立ち向かうアナログな子たち、みたいな感じのイメージです。

齊藤:やった! 頑張ります!

齊藤:僕はアイドルカルチャーに詳しくないんですけど、彼の作る曲の感じは自分より若いんで、なにかミックスできるかなと思って。静かな曲もこれから出てくると思うんですけど、まずは激しいほうに振り切った、ハードな部分を一番出したかったんです。別にメタルをやりたいわけではまったくなくて、そのときの本人たちに合うサウンド感として、ゆよゆっぺくんのバランス感がすごく良かったんですよね。面白いですよ。メタルというよりLimp Bizkitとか、Rage Against the Machineとかそういうのをリファレンスとして送ったら、ああいう感じが戻ってきたんです。たしかにリフの感じはリンプとか僕の好きな感じではあるんですけど、それが今風なサウンド感になっているんですよ。

齊藤:そうですね。僕がもう一度立ち上がるのと一緒にamiも立ち上がるわけだし、ちぃちゃんも新たに立ち上がらなきゃいけないので。いろんな音楽のカルチャーを通って、いろんな経験をしたうえでもう一回やるのって、力と自信とタフネスさがさらに必要になると思うんです。それでも僕は立ち上がれたので「Rise」という感じで、ふたりにも立ち上がれ! と。

chiyono:そうですね。今まで3776でやってきた歌い方って、そもそもボイトレとかも受けてない、本当に生まれた状態のままで――

chiyono:3776はそれでいいんですけど、nicoraはそういうわけにはいかなくて。歌い方をがっつり変えてやるので、ボイトレをしてようやく慣れてきたところですね。まだまだできるはずなので、今後の成長にご期待ください(笑)。

ami:ボーカルのレッスンには私も参加しているんですけど、ちぃちゃんの成長スピードが速すぎちゃって、私はいつもそれに拍手しています。声の芯がすごい。めっちゃカッコいい。

齊藤:全編英語詞の曲に今トライしているんですけど、発音が感覚的に良かったり、ニュアンス感がいいと思います。海外の友達にも聴かせるんですけど、やっぱ声がいいみたいです。ミュージカル俳優の友達とかも「声がいいな、バラードを聴きたいな」とかLINEで来たりして。僕はもともとアイドルっぽいニュアンスをつけすぎる歌い方がそんなに好きじゃないんですけど、ちぃちゃんの場合はまっすぐなわりにニュアンスがいやじゃないんですよね。ちぃちゃんが歌ってくれるときの、ひっくり返したり、ふにゃんってしたりする感じがすごく心地いいですし、技術も上がっています。

chiyono:nicoraでボイトレを受け始めてから、他の現場で褒めてもらいことが増えました。おかげさまです。

齊藤:ハードな感じも好きなんですけど、それだけだと全体の完成系じゃない感じですね。なので、「ああいうサウンドだけで想像して欲しくないな」と思いながら1stシングルを出します。難しいところですよね。わかりやすさというか、ここまで振り切れるよというものは絶対出さなきゃいけないと思っているんです。だからライブに来たときに「おっ、こっちの方向性もあるんだ」という発見をしてもらうために、隠しているようなところはあります。全体を聴いたのは宮﨑さんしかいないんですけど、あれが並んだらまた受ける印象は違いませんか?

齊藤:そうなんです。なんならインストだけの曲があってもいいし、iconが休んでAnimalsだけで歌うとか、そういう出し引きみたいなものはたくさん考えています。

齊藤:正解です。ハードな曲があるなかでのnicoraの箸休め楽曲担当ですね。「この曲で落ち着いて!」って(笑)。基本的にサウンドはBOHちゃんとかのチームにお願いしたいんですけど、作り手は特に固定していなくて、岡田くんにも普通に頼みたいし、いろんな作家さんをシャッフルしていきたいなって。

齊藤:とりあえず海外に行きたい。来年には行けるようになんとか組みたいですね。日本がどうこうとかシーンがどうこうじゃなくて、自分たちが体験していないことを体験しないと意味がない――いや、意味がなくはないんですけど、経験してきたこと以外の経験をしにいくには、やっぱり海外に行くというのは絶対にやりたいです。あとはamiinAのときからの夢だった野音(日比谷公園大音楽堂)はやりたいですね。ワンマンじゃなくて、イベントをやりたいんです。nicoraでの目標はこのふたつかな。

chiyono&ami:海外に行きたい!

ami:たしかにあのころはメラメラ感がありましたよね。

齊藤:だから、あの時期に海外に対してアプローチをかけていたらどうだったとか、いろんな「もしも」がまだやれるんだったら、人に期待しないで自分たちで行って、見て、体感して、良かったのか駄目だったのかをジャッジしたいです。それと、nicoraはまず自分たちでイベントを組んで、好きなバンドとかアーティストを呼ぶというのをとにかく繰り返してみます。

齊藤:まぁ、僕はもう変な肩肘は張らないでいきます。amiとちぃちゃんと岡田くんとか、周りのためだけにやりますね。今は信じてくれている、楽しんでくれる仲間だけで十分です。マインドが、あのときの自分に似ていて、引き継いでくれている人たちもいる。リスペクトがある方たちがいて、まだ踏ん張ってくれている以上、僕はさらに先に違うルートを……という感じはあります。

Interviewer:宮﨑 大樹